●第3回「深夜のバカ力のスペシャルウィークはなぜつまらないのか?」


さて、いきなり挑発的なタイトルですが、はっきり言って、今回は妄言です。いや、じゃこれまで2回が妄言じゃないのかと言われれば、程度の差こそあれ妄言ではあるんですけどね。ただ、今回は提言的なものも無いし、これが正論だと受け取れる人はほとんどいないと思うし、ま、位置付けとしては“深夜のバカ力のスペシャルウィークがつまらなかった時でも、こう考えてみれば少しは気も治まるのでは”的な文章です。その程度の意識で読んで下さい。

で、こういうテーマが成立してしまうほど、深夜のバカ力は“普段の放送に比べてスペシャルウィークになるとつまらない”という人が多いです。“企画をやるよりフリートークの方が面白い”“ハガキコーナーをやってくれ”という意見をよく見かけますね。さらに、普通の番組と違うのは“スペシャルウィークだから聴いた”“スペシャルウィークの方が面白い”という意見が全く見られないと言うこと。肯定的なものとしても、せいぜい“今週はスペシャルウィークなのに面白かった”なんて言われ様です。確かに、私も「深夜のバカ力はスペシャルウィークの“あたりはずれ”がかなり激しい番組だな」と思っています。

ではここで、そもそも「スペシャルウィークとは何か?」という所に立ちかえってみましょう。まぁ、普段ラジオを聴く人にとっては言うまでの無い話ですが、スペシャルウィーク=聴取率調査週間なわけで、この週の放送を対象に番組の聴取率調査が行なわれます。つまり、この週の放送さえ聴いてもらえれば、少なくとも2ヶ月(首都圏)はその数字で番組が評価されるわけです。そのため、制作側はこの週に企画とお金をつぎ込んで、なんとかヘビーリスナー以外の浮動層を取りこみ、聴取率の水増しを計ろうとする。これがスペシャルウィークの特別企画になるのです。

ある番組は、普段の番組では有り得ないような豪華なゲストを呼んで、そのゲストのファン層を聴取率に取りこもうとします。また、ある番組では豪華プレゼント企画を行ない、応募用のキーワードを番組の要所々々で発表することで、商品欲しさのリスナーを無理矢理取りこみます。たとえ多額の制作費がかかったとしても、聴取率があがり、スポンサーが獲得できれば収支があう話ですからね。

ところが、深夜のバカ力のスペシャルウィークはこのどちらにも当てはまりません。ごく稀にゲストを呼ぶことはあっても、ゲストでリスナーを釣るような使い方&告知をするわけでも無し(ファン層に重複がありそうなアンタッチャブルや、全国でも固定ファンが7〜8人って所のその他若手芸人は論外ね)、またプレゼントも他番組との連動のもの以外は、企画に付随したものや、もしくは通常週のリスナー以外の人には何も訴求しない様なものをプレゼントする程度。おおよそリスナーの拡大に繋がるような企画をやっているとは思えず、本来のスペシャルウィークの主旨とはかけ離れた放送が聴取率週間の度に行なわれている状況です。

であれば、ともすれば通常週のリスナーが離れてしまうようなスペシャルウィーク企画をやることは全く意味が無く、むしろ普通の放送をやっていたほうが今以上に聴取率が稼げ、本来の目的が果たせるのでは?と思ってしまうのは必然です(現に、かつてこの時間帯で聴取率N0.1だった「とんねるずのANN」はスペシャルウィークでも企画らしい企画をやらず、通常のフリートーク&ハガキコーナーで聴取率を稼いでいました)。では、なぜ深夜のバカ力はスペシャルウィーク企画を行なうのでしょうか?私が推測する理由は2つ。ひとつはTBS側の事情。もうひとつは伊集院光側の事情です。

まず考えられるのは、TBS内に“スペシャルウィークだから企画をやらなければいけない”という空気があるのでは?と言うことです。私も会社員をやっているのでわかるのですが、企業では新商品が出たり重点販売商品があったりすると、〇〇フェアやお客様感謝デーみたいなことをやって、PRやイベントに経費をかけて売上増につなげるということが行なわれます。ところが、これが恒常的に行なわれるようになってくると、いつのまにか年間スケジュールに定期的なフェアが予定されていて、最初から予算が組まれている為、その時期になると“フェアだからなにか重点販売商品を作らないと!”という本末転倒が起るのです。TBSの制作もこれと同じような状況になっているのだとすれば“スペシャルウィークには通常放送ではなく、なにか企画をやらなければいけない”という前提で制作され、あのような本来の意味をなさない企画放送が行なわれてしまっているのではないかということが考えられるのです。

ただ、こんな理由だとすると、ちょっと納得いかないですよね。池田Pが“通常放送の方が数字が取れる”と言うことを企画書として上に提示できればいいだけの話ですからね。では、それでもスペシャルウィーク企画を行なう理由はなんでしょう?そこで、考えられるのがもうひとつの“伊集院光側の事情”です。

通常週の深夜のバカ力は、伊集院さんのフリートーク半分、ハガキコーナー半分で構成されています。このうちハガキコーナーはリスナーの書くハガキに対し伊集院さんがそのネタで話を膨らませるという形体でどちらかと言うとリスナーメインで笑かす形となります(いや実際は伊集院さんの力で面白くしてる部分も大きいんですけどね)。で、フリートークの方はというと、当然伊集院さんメインなのですが、この部分ひょっとして伊集院さん自身が“自分がリスナーを笑かしてる”という意識無くやってる部分なんじゃないかと思うのです。

学園祭とかで伊集院さんがテーマフリーのトークライブとかをやるのを聴いた事ある人はわかると思うのですが、恐らくなんの準備も無い様な状況でもその日の話題とかから始めて1時間とか2時間とかちゃんと笑いアリでしゃべりきってしまったりして、伊集院さんはその辺のことが何の苦労も無く本能的に出来てしまう人の様です。つまり、伊集院さんにとっての番組のフリートークは、我々にとっての“挨拶をすること”程度にしか感じてないのではないのかと思うのです。

そうなると、伊集院さんは考えます。「リスナーはちゃんと考えたネタで笑かしてるのに、俺はなにも考えてないぞ!俺もなにか面白い企画考えないと!」と。まぁ、“伊集院さんがリスナーに対して対抗意識を燃やしてる”なんて、かなり自惚れた考えかもしれませんが、ただ以前、伊集院さんはあるハガキ職人さんのネタを同じ日の放送で数枚読んだ時に、こう言った事があるのです。「なんか、今日はこの人に笑わされっぱなしだなぁ。悔しいなぁ」と。リスナーのハガキが面白かった時に、“俺も”という気持ちが無い人ではないようです。

そこで、そうしたリスナーのハガキに対抗し、自分の考えた企画で聴いてる人を笑かしたろ!という気持ちが形になったのがスペシャルウィーク企画なのです。言いかえれば、リスナーに笑かされた分に対抗し、「これ、俺のおもろい奴や!(※1)」とネタをかぶしていくことで、伊集院さんが自意識を保つ為の場なのです。で、どんな常連さんでも採用されるハガキの裏にはそれを上回る量のボツネタがあるはずです。伊集院さんがプロだと言うことを差し引いても、毎回面白い企画を続けろと要求するのは酷な話でしょう。我々がボツネタを重ねるくらいの頻度で“イマイチ”なスペシャルウィークになってしまうのはしょうがないことなのです。

そう考えてみると、通常週で面白い放送が聴けるのは、スペシャルウィークで伊集院さんがフラストレーションを発散し、番組に対するモチベーションを保っているからこそなのです。うん。どうでしょう?こう考えてみれば、スペシャルウィークが面白くなかった週も自分を納得させることができませんか?あ、だめ?やっぱ。。。

※1 私が今考えたオリジナルの言いまわし。でも、ちょっと使い方違ってるな。。。

2004.3.20  NEWラジパラザウルス


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